経営情報

トップメッセージ

海外拠点を新たに取得し長期目標へ向けてまた一歩前進いたしました。代表取締役社長 黒田雅史

第62期のポイント

  • 売上高・営業利益は過去最高を更新し営業利益は21期連続で増益を達成

    自動車リース関連事業が伸び悩みましたが、2023年10月にマルイ工業株式会社(合成樹脂事業)、同年11月に日東エフシー株式会社(農業関連事業)がグループ会社に加わったことで、連結業績は売上高・営業利益ともに過去最高を更新し、営業利益については21期連続で増益を達成しました。

  • パーキング事業は稼働率の向上で引き続き好調を持続

    パーキング事業は、時代のニーズに合わせてQRコード決済などの非接触型精算方式の導入を推し進めており、そのため経費が増加しましたが、コインパーキングの稼働率が、コロナ禍前に戻ったことで、増収増益となりました。

  • M&Aにより新たな海外拠点を取得し加えて農業関連事業が新たなセグメントに

    マルイ工業株式会社はタイに子会社2社を有しており、自動車装飾部品の製造・販売を行っています。当社グループとしては新たな海外拠点として活用していく計画です。また、日東エフシー株式会社は肥料の製造・販売を主要事業とし、売上高では200億円規模となりますので、新たに農業関連事業をセグメントとして記載することになりました。

第63期のポイント

  • 自動車リース関連事業は引き続き厳しい状況が続く見通し

    リース及び、メンテナンス受託は、引き続き原価の上昇による影響が出てくることが予想されます。第63期におけるセグメント業績は、利益確保が大きな課題となり、燃料販売・車両販売も大幅な伸長が期待できず、減益になる見通しです。

  • 注力地域と位置付けたタイを中心にASEANへの本格進出を模索

    当社グループはタイを注力地域と位置付けており、拠点を有する空調工具の低価格帯独自ブランド「TASCO BLACK」の商品ラインアップ拡充が図れ、新たなマルイ工業株式会社傘下の拠点との連携が進めば、ASEAN全体を視野に入れた海外事業の展開が見えてきます。

  • 第63期における連結業績は増収増益で営業利益の22期連続増益も達成の見通し

    第62期にグループ会社となった2社(マルイ工業株式会社・日東エフシー株式会社)は、ともに安定的な業績を誇っています。第63期においては1年間の実績が反映されるため、連結業績は増収増益の見通しとなり、営業利益についても、22期連続の増益が達成できる見込みです。

  • 第62期(2024年3月期)のご報告をお願いいたします。

    当社グループは、長期経営数値目標として掲げた「売上高2,000億円超・営業利益200億円超」へ向け、3つの成長戦略「積極的なM&Aの展開」「海外展開の強化」「既存事業の規模の拡大」を推し進めております。
    それでは第62期の事業の概況をセグメント別にご報告いたします。なおセグメントにつきましては、農業関連事業を新たに加えました。
    自動車リース関連事業は、リースが安定して契約台数を伸ばしましたが、自動車メンテナンス受託は、契約台数の減少に加え、原価上昇に伴う値上げ交渉が進捗しなかったことにより収益を減らしました。燃料販売は、安定して好調に推移しましたが、車両販売の利益が前期比で減少したこともあり、セグメントの収益につきましては、前期比で減収減益となりました。
    ケミカル事業は、原価の上昇に伴って値上げを行っていますが、コンシューマー製品の買い控えや燃料添加剤の伸び悩み等により、前期比で増収減益の結果でした。
    パーキング事業は稼働率がコロナ禍前に戻るなど好調を持続しており、精算機の非接触対応等の経費増はあるものの、引き続き前期比で増収増益となっております。
    機械工具販売事業につきましては、建設機械関連・空調関連は順調に推移した一方で、卸売事業の効率化が進まず、セグメントの業績は伸び悩みました。
    合成樹脂事業は、主力の遊技機分野で一部需要が先送りになりましたが、科学計測機器と半導体実装装置用セラミックヒーターが順調に伸長し、加えて2023年10月、新たにグループ入りしたマルイ工業株式会社の収益が寄与したこともあり、前期比で増収増益となりました。
    新たにセグメントとなった農業関連事業は、2023年11月に肥料の製造・販売を主要事業とする日東エフシー株式会社のグループ会社化により、黒字に転じました。
    その他事業のガラス加工事業は、顧客への価格改定が順調に進み、利益が大幅に伸長しました。
    以上の結果、第62期の連結業績は、売上高1,382億53百万円(前期比8.2%増)、営業利益90億45百万円(前期比2.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は122億53百万円で増収増益となりました。おかげさまで営業利益は21期連続で増益を達成いたしました。
    期末の配当につきましては、1株当たり30円とし、前期末と比べ5円の増配とさせていただきました。年間では中間期の30円と合わせ、60円となっております。

  • 「海外売上高比率20%」へ向け海外事業の現状と今後の展開をお聞かせください。

    第62期におきましてマルイ工業株式会社をグループ会社化したことにより、タイにある同社の2つの子会社が、新たな拠点として活用していけるのではと考えております。現地採用の営業社員もおり、当社グループの商材を販売していくプランを模索しているところです。また、タイは各国の自動車メーカーが集まっている地域でもあり、得意分野であるエンブレム等の自動車装飾部品で中国メーカーや他の海外メーカーへの営業拡大を図ってまいります。
    現在、タイは当社グループにとっての注力地域と位置付けており、既存事業の拡大を推し進めています。空調工具の低価格帯独自ブランド「TASCO BLACK」に関して、商品ラインアップの拡充・開発強化に取り組むことで、TASCO(THAILAND)Co.,Ltd.の売上規模の拡大が図れ、さらにマルイ工業株式会社との連携が軌道に乗って行けば、ASEAN諸国全体を視野に入れた中心拠点の設置も検討していかなければなりません。
    海外事業の核の一つである中古車販売は、ニュージーランドで2店舗を展開しているICHINEN AUTOS(N.Z.)LIMITEDが3店舗目を計画しています。取り扱う台数が増えるとともに現地のニーズに合わせていくには、株式会社イチネンから調達する分では賄いきれないため、より機動的に調達・仕入ができるよう、今年の4月に株式会社イチネン オートス・ジャパンを設立しました。また、期待地域と位置付けている中央アフリカでの中古車関連事業に関しては、トライアル出荷も開始いたしました。現時点では輸出前検査や整備面を担う予定ですが、今後の進展に期待したいと考えております。同じく期待地域のモンゴルへは中古農機を提供しており、台数はまだわずかですが、少しずつ実績を上げてまいります。

  • 新しいセグメントの農業関連事業につきまして今後の進展をどのようにお考えですか。

    生産に関しては、株式会社イチネン農園が兵庫県丹波篠山市でミニトマトをハウス栽培し、高知県では株式会社イチネン高知日高村農園が大規模ハウスでミニトマト、南国市で2022年から次世代ハウスによるピーマンの栽培を手掛けて、順調に生産量を増やしています。しかしながら採算面ではまだまだ厳しい状態であり、課題解決へ向けた今後の展開としましては、生産した農産物を使用しての加工事業への参入が当面の目標です。現在、株式会社イチネンホールディングスのグループ事業開発室が中心になって様々な商品開発に取り組んでおります。
    新たにグループ会社に加わった日東エフシー株式会社には、主要事業である肥料の製造・販売のさらなる拡大とともに、培ってきた肥料の開発技術や農作物の栽培技術を活かし、生産事業との連携を進めてもらいます。
    また、同社は海外から肥料の原材料および肥料それ自体の輸入を行っており、言わば商社機能を有しております。日本で生産した農作物の輸出、食品加工に必要な材料の輸入など、農業関連事業における商社ビジネスも可能です。さらに肥料は化学の領域でもあり、ケミカル事業との連携も大いに期待できます。そして、そこで誕生した新製品を国内外へ流通させるといった新たな展開も考えられます。

  • 第63期(2025年3月期)の見通しと株主様へのメッセージをお願いいたします。

    第62期に苦戦した自動車リース関連事業は、価格改定が進捗すれば回復する見通しです。リースは契約更新時に交渉ができ、利益面での改善は可能ですが、メンテナンス受託は厳しい側面が予想されます。その一方で、東京電力グループを主要顧客とする株式会社イチネンTDリースは、設備リースも含め、伸長が見込めます。加えて、燃料販売・車両販売は安定した利益確保を予想しており、原価上昇による利益減をカバーしてくれるのではないかと考えております。
    ケミカル事業は新製品の開発・市場投入に注力し、利益増を図ってまいります。パーキング事業は、精算機の新札対応により経費増となりますが、稼働率が堅調に推移することが予想され、引き続き好調な業績が残せる見通しです。機械工具販売事業は、利益改善を目指し、オリジナル製品の開発と販売の強化に注力いたします。
    合成樹脂事業は、遊技機分野の需要がさらに先延ばしの気配ですが、マルイ工業株式会社の安定した業績が貢献することになり、セグメントとしては伸長が図れます。また、同社では積極的に新製品開発を推進しており、市場投入できれば、さらなる飛躍も期待できます。農業関連事業も、新しくグループの一員となった日東エフシー株式会社が業績を牽引していきます。その他事業のガラス加工事業は、東京のビル建築が2030年くらいまで好調に推移することを背景に、建築用ガラスが順調に推移していくことが予想されます。
    連結業績の見通しにつきましては、円安の進行やさらなる原価の上昇などの懸念材料もあり、厳しい経営環境が続きますが、不振が予想される事業がある一方で好業績が見込める事業もあり、グループ一体経営の強みを発揮して、増収増益が図れると考えております。当然のことながら、営業利益の22期連続増益も目指してまいります。
    第63期は、新たに取得できた海外拠点をどのように活用し発展させていくか、その道筋を探る1年になりそうです。いま人材育成の一環として少人数ながら海外研修を行っていますが、当人はもとより現地スタッフもプラス面での刺激になっているようで、海外事業を加速させていくための準備も、一歩ずつながら前に進んでおります。
    株主様におかれましては、さらなるご支援とご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。